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スター投資家の集い - Sohn Conference

7/7/2016

 
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​拙著でも紹介している通り、ニューヨークという場所は、「目利き力のある投資家」のハブとして、資本、人材、情報が集積しています。そのため、「目利き力のある投資家」たちが一堂に会するイベントも多く、その度に、国内外の投資家たちの注目を集めています。
 
中でも、業界で最も注目されるイベントと言えば、Sohn Conferenceです。
私も参加してきましたので、今回は、その内容について少し紹介します。
 
イベントの公式ウェブサイトは以下の通りです。
http://www.sohnconference.org/new-york/
 
Sohn Conferenceとは、一年に一回、多くのスター投資家たちが一堂に会し、自身のベスト・アイディアを聴衆の前で披露する場です。拙著で紹介している、いわゆる「ストック・ピッチ」です。
 
イベント名の由来は、ウォール街のプロフェッショナルとして将来を嘱望されながら、若年性がんで命を落としたIra Sohnから来ています。同氏の友人等が若年性がんの研究のために基金を設立し、寄付を募るためのチャリティーイベントとして発足したのがSohn Conferenceです。したがって、このイベントの入場料等の収入は、全て同基金に寄付されます。Conferenceにてストックピッチを披露するスター投資家たちも、同基金のミッションに賛同し、チャリティーとしてこのイベントに参加しています。
 
Sohn Conferenceが一躍注目されるきっかけとなったのは2008年。スター投資家であるDavid Einhornが、この場で大々的にリーマン・ブラザーズ社のショート・アイディアを披露。その後、Einhornの投資ストーリーが見事に具現化し、同氏、そして、このイベントが世界的に注目されるようになりました。以降、毎年数多くの投資家やファイナンス関係者が聴衆として参加し、Conference自体も、ニューヨークだけでなく、ロンドン、香港などを含む、世界各国で行われるようになりました。
 
Conferenceの舞台はリンカーン・センター。世界有数のオーケストラであるニューヨーク・フィルハーモニックが演奏するコンサートホールとしても有名です。当日は、スーツ姿の参加者で満員。金融メディアも臨時スタジオをセットしていて、スター投資家が「ストックピッチ」で披露した内容を、瞬時に市場に伝えます。「ストックピッチ」後のスター投資家のライブインタビューも中継されます。もちろん、話題に挙がった企業の株価は即座に反応します。
 
スター投資家のインタビューなどは、下記のCNBCのサイトでまとめて見ることができます。
http://www.cnbc.com/sohn/
 
進行は、基本的にスター投資家たちのストックピッチが一日中続くのですが、途中でMBAの学生が一人出てきます。スター投資家たちが審査員を務めるストックピッチ大会で優勝した、コロンビア大MBAの学生です。彼の投資アイディアはDexcomという糖尿病の医療機器メーカーのショート戦略。スター投資家たちが認めただけあって、内容はしっかりしていて、市場もこのピッチ後に動きました。投資アイディアは、「誰が」ピッチするのか、というのも確かに重要ですが、やはり最終的にはアイディアの「質」が勝負を決める、ということがわかります。
 
なお、他に興味深かった投資アイディアの一部につき、簡単にご紹介します。
 
Jeffrey Gundlach (DoubleLine)
 
新債券王と呼ばれる、スター投資家です。株ではなく債券の投資で有名ですが、幅広い投資戦略についてコメントすることで知られています。今回のアイディアはETFのロングとショートの組み合わせでした。
 
投資アイディア:モーゲージREIT(不動産を担保としたローンや証券への投資をする専門会社)のETF(銘柄名:REM)のロングと、インフラ関連のETF(銘柄名:XLU)のショート。
 
理由:どちらも配当利回り重視の投資家に好まれており、パフォーマンスの相関が強い。ただ、現状はREMの方がかなり割安、XLUがかなり割高となっているため、この差がいずれ縮むことによって利益が得られる。
 
なお、同氏はプレゼンが上手いことで知られ、今回も大統領候補のドナルド・トランプをネタにかなりの笑いを取っていました(余談ですが、現在の米国では、トランプの話題でスマートに笑いを取ることが一種の流行となっています)。
 
Chamath Palihapitilya (Social Capital)
 
著名ベンチャー・キャピタリストとして知られる同氏ですが、今回は上場株のアイディアを披露しています。
 
投資アイディア:アマゾンのロング。
 
理由:特にクラウドビジネスが成長を牽引する。クラウド事業を展開する他社はアマゾンのように設備投資ができないので、いずれアマゾンの独占事業となり、ユーザーにとっては、一種の「インターネットの税金」のようになる。株価は10年で10倍になると予想。
 
David Einhorn (Greenlight)

当日のトリは、やはりこの人でした。
 
投資アイディア:Caterpillar社(建設機器)のショート。
 
理由:鉱業セクターのスーパーサイクルはまだボトムをヒットしておらず、今後も更に厳しくなることが予想され、同社製品の需要は引き続き停滞するため。
 
ちなみに、登壇してすぐ、同氏はPalihapitilyaのアマゾンのアイディアについて、「(彼は)税金というものの本質がわかってない」と冗談交じりに言って、反論していました。Einhornはアマゾンをショートしていることで知られています。拙著でもご紹介したとおり、こういった公開の場でスター投資家同士でバトルが繰り広げられることもしばしばあります。見ている方は面白いのですが・・・
 
ちなみに、本イベントはチャリティーイベントですので、ストックピッチの合間に寄付金を促すビデオが流れます。近年、特に同基金が力を入れているのが小児がんのリサーチへの寄付です。こう言っては何ですが、昨年参加したときは「よくある話」と、正直そこまで関心がなかったのですが、子供が生まれ、父として参加した今年は、とても他人事とは思えず、心を動かされました。
 
投資アイディア一つで、ここまで世間の関心と寄付金を集め、こういった小さな命の救命のためにインパクトを与えることができる。改めてスター投資家の影響の大きさを感じた一日でした。

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    投資プロフェッショナル。著者。投資、MBA、書籍などについて綴ります。

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