米国で8月下旬といえば、「Back to school」の季節です。長い夏休みが終わり、学校が始まる。それは、小学生も、MBA生も変わりません。 そしてHBSでは、1年生たちが同校の代名詞とも言えるケース・メソッドを初めて体感する季節でもあります。私も、この時期になると身体が思い出します。あの衝撃を。 拙著でもケース・メソッドについては触れていますが、今回はその番外編として、授業の流れやその準備等について、補足していきたいと思います。具体的には、授業の予習と流れ、そしてケース・メソッドの骨子をなす発言の良し悪しについて、簡単に紹介していきます。 まず、第一弾は、授業の予習についてです。 拙著でも触れていますが、HBSはほぼ全ての授業においてケース・メソッドを用いることで知られています。 ケース・メソッドとは、端的に言えば以下の形式の授業のことです。
そのため、このシステムが機能するには教授はもちろんのこと、学生にも周到な準備が要求されます。学生にとっては、授業中に発言をして議論に参加することが予習のアウトプットとなります。HBSでは授業中の発言が成績の50%を占めるため、しっかりと予習し、発言の質と頻度を高める必要があります(当然ですが成績が極端に悪いと進級・卒業できません)。 学生の典型的な準備の仕方は、概ね以下の通りです。 (1)ケースを読む(1時間〜1.5時間) ケースは、まず読まなければ始まりません。科目によってケースの長さは違いますが、だいたい英文15~20頁、Exhibit(グラフ等の添付資料)が5〜10頁といったところでしょうか。ただ、ケースが長いことで知られるマクロ経済の授業などは、Exhibitが30頁を超え、全体で50頁に及ぶこともあります。また、ケースに加え、教科書や論文の予習といった追加の課題が課されることもあります。 (2)発言内容の考察(30分〜) あくまでも予習のアウトプットはクラス内での発言となりますので、大まかな内容を考えておく必要があります。テーマは概ね、①現状の課題の分析、②貴方がケースの主人公ならどうするか、といった2点に集約されます。 発言の内容については、考え出すとキリがなくなることがあります。私も、最初はペースが掴めず、延々と考えて時間だけが過ぎていくことがありました。 (3)その他(30分〜) 科目によっては、発言以外でもアウトプットを求められることがあります。例えば、ファイナンスの授業では、分析対象企業の業績やキャッシュフロー予想を、エクセルを使って算出することが課されます。そして、その分析で自分が気づいた点などについて、発言を求められます。 HBSは、(1)〜(3)で2時間を推奨しています。3コマ・3ケースある日がほとんどなので、1ケース2時間としても、予習だけで6時間。確かに、それ以上は(睡眠を大幅に削る以外は)物理的に出来ませんし、経験上、それ以上は費やす時間に対する効果は大幅に逓減していきます。 |
Author投資プロフェッショナル。著者。投資、MBA、書籍などについて綴ります。 Archive
May 2017
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