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「BRICK AND MORTAR」の苦戦と「AMAZON BOOKS 」NYC店のオープン

5/28/2017

 
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「Synchronized global expansion」という言葉が金融メディアを賑わしています。

世界経済の好調さを示すこの表現。経済が好調であれば、消費も拡大し、企業も潤います。実際、米国企業の決算は良好な数字が並んでいます。

その中で例外的に苦戦を強いられているのが、米国で「Brick and Mortar Retail(B&M)」と呼ばれるセクターです。B&Mは、所謂「箱物」の店舗を展開するリテール企業全般を指し、その代表格には JC Penney等の大手デパートが挙げられます。

B&Mの苦戦は今に始まったことではありませんが、今年に入り、金融メディア等で取り上げられる頻度が更に上がったと感じます。例えば、総合誌 The Atlanticの「What in the World Is Causing the Retail Meltdown of 2017?」という記事。市場関係者にも注目された本記事は、B&Mの苦戦の理由について以下の3点を挙げています。

1)消費は店舗からオンラインへ
この傾向自体は今に始まったことではありませんが、モバイルのユーザビリティの向上により、そのスピードは加速しています。特にアパレルの伸びが顕著であり、eCommerceにおける最大のカテゴリーへと成長しています。

2)ショッピング・モールの供給過多
他国と比較して、米国はショッピング・モールを、特に地方に作り過ぎたと言われています。また、モールは言わば「バンドル型」の施設です。「アンカーテナント」と呼ばれる大型店舗が好調だった頃は、周りの小規模店舗も「ついでに〇〇店に寄って行く」といった購買行動の恩恵を受けられましたが、デパート等の大型店舗が苦戦する現状では、小規模店舗はその恩恵を受けられず、同様に苦戦を強いられています。

3)「モノ」より「体験」
「消費」というパイの奪い合いでは、「モノ」<「体験」の傾向が顕著となっています。特に若年層では、「Instagramにポストしたい体験」が消費のキーワードになっているとも言われています。

また、上記2)のポイントを深堀し、「地方のショッピング・モールの不動産価格は大幅に下落するのではないか」といった仮説を立て、投資行動に移している著名投資家もいます。具体的には、こういったショッピング・モールの不動産を担保とした証券化商品の指数(CMBX)をショートする取引です。ただ、この投資行動については、a) カタリスト不足、b) ベストな取引手段ではない、といった声も聞かれます(投資アイディアを立案し、効果的な投資行動として具現化するうえでポイントとなる上記 a)、 b) の詳細については、拙著をご参照ください)。

このようにB&Mが苦戦する中で、出店攻勢をかけている企業があります。

その企業とは、Amazonです。「Amazonが出店」というと一見矛盾しているようにも聞こえますが、同社はお膝元のシアトルを皮切りに、米国中に「Amazon Books」の出店を計画しています。

その「Amazon Books」のニューヨーク・第一号店が週末にオープンしましたので、早速行ってきました。

場所は、ミッドタウンの一等地であるコロンバス・サークルのショッピング・センター内。あくまでもショッピング・センター内の一店舗であるため、そこまで広くはありません。

店内は、アマゾン・ユーザーにとって直観的なレイアウトになっており、まさに「オンラインとオフラインのユーザー・エクスペリエンス(UX)を融合した」構成となっています。例えば:

  • 本の表紙が見える:一冊毎に、表紙全体が見えるように棚に並べられています。
  • レビューを参考にできる:一冊毎に、代表的なレビュー、レビュー数、星数を示す案内が展示されています。
  • 「おすすめ」が見れる:「If You Like...」といった、ベストセラーの類似本を紹介する棚があります。
  • アマゾンのモバイル・アプリと直結:アプリ内のカメラ機能を表紙にかざすだけで本の情報を読み取り、支払いもその場で出来ます(店員に支払い画面を見せるだけでOK)。プライム・メンバーであれば、オンライン上の価格で購入できます。
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ビジネス書のセクション。全て表紙が見えるように並べられています。
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オンライン上ではお馴染みのおすすめ機能を、「If You Like...」といった棚を設置する形で反映しています。
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一冊毎に代表的なレビュー、レビュー数、星数を表示しています。また、アプリのカメラ機能に表紙をかざすことで、スマホでも内容を確認でき、決済もできます。

ニューヨークでは Warby Parker を初め、既に複数のオンライン・ブランドが直営店を出店していますが、eCommerceの象徴的な存在とも言えるAmazonの出店には、同社による「オンラインのUXだけでなく、オフラインのUXの創造、そして融合」への挑戦という側面も垣間見えます。Amazonについては、既にHBSでも複数のケース・スタディが執筆されていますが、今回の出店攻勢に関する戦略的意義についても、近い将来にケースが執筆され、クラスで議論されることでしょう。

なお、当日は我が家も購買意欲を駆られ、書籍を買いました。買ったのは、1歳半の息子の絵本。息子は表紙を気に入ったのか、手にとって離さず、父が棚に返そうとすると号泣。「そこまで気に入ったのであれば」ということで、スマホでアプリを立ち上げ、「お買い上げ」となりました。帰り道、満足気な息子をベビーカーで押しながら、「確かに、これまで絵本やおもちゃはほぼ全て私たち親がオンラインで買ってきたため、息子自身が何かを手に取って選んで買うことはあまりなかったかもしれない。こういったところに、オンラインではなくオフラインでショッピングする楽しみがあるのでは」と妙に納得してしまいました。

新しくオープンしたAmazon Books。オフラインの楽しみを覚え始めた息子と、その楽しみを思い出した父とで、今後も通いそうです。

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    投資プロフェッショナル。著者。投資、MBA、書籍などについて綴ります。

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