今回は、ランニング・シューズを題材とした良書2冊をご紹介します。 一冊目は、米国でベストセラーとなっている「Shoe Dog」。Nikeの創業者であるPhil Knight氏による自伝です。同社はBlue Ribbon社として創業。1960年代に日本国内で絶大な人気を誇っていたオニツカ・タイガー(現アシックス)の米国への輸入販売からスタートします。その後、日商岩井(現双実)などの支援を受けて自社開発シューズで成功し、1980年に上場。それまでの過程を、「ここまで普通覚えていないだろう」と読者を唸らせるほどのディテールでKnight氏が赤裸々に綴っています。 人物描写が豊富で、ノンフィクションですが小説を読んでいるかのよう。自伝にありがちな自画自賛ではなく、創業者としてどれだけ迷い苦しんだかが描かれており、終章では家族等に関する後悔の念も記されています。マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズなど、Nikeのセレブたちとの逸話を期待するとがっかりするかもしれませんが、「人間:Phil Knight」を知るうえではこの上ない書と言えるでしょう。ただ、一言申すとすれば、日本関係者が多いせいか文中に日本語のフレーズが何度も出てきますが、多くが間違っていた点でしょうか(日本人以外は気にしないでしょうが・・・)。日本語ができる編集者はいなかったのでしょうか・・・。 二冊目は、日本でベストセラーとなっている「陸王」。著者の池井戸氏の作品はこれまでほぼ全読しており外れはありませんが、本書はその中でもトップの部類に入る面白さでした。ジャンルとしては「半沢シリーズ」より「下町ロケット」。主人公の宮沢が率いる足袋専門の零細企業が、その技術を活かしてランニング・シューズを開発し業界大手に挑む、といったストーリーです。 600ページ近い長編ですが、一気に読めます。読後気になって少し調べてみましたが、「きねや足袋」という実在の会社が一部のモデルとなっているようです。 興味深かったのは、Knight氏も宮沢社長も、ビジネスを超越した「想い」を込めてランニング・シューズを作っているという点です。ノンフィクションであれフィクションであれ、その「想い」に読者は動かされます(私を含めて)。こういった「想い」が、結果的にビジネスの成功にも繋がるのではないか。ビジネスをやるうえでも、投資をするうえでも、忘れてはならないのではないか。読後久しぶりにランニング・シューズを履いて外を走りながら、そう思いました。 Comments are closed.
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Author投資プロフェッショナル。著者。投資、MBA、書籍などについて綴ります。 Archive
May 2017
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