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スタートアップ体験談:Disrupted: My Misadventure in the Start-Up Bubble

9/19/2016

 
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今回ご紹介するのは、ヒットドラマ「Silicon Valley」の脚本家でも知られる、Dan Lyons氏による話題の書です。

本書は、Lyons氏のHubSpotでの体験談となっています。同氏は、Newsweekにて主にIT業界をカバー。しかし、諸事情によりベンチャー企業のHubSpotに参画することになります。同社は、MIT出身の創業者が起業。飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大し、2014年にIPOしたベンチャー企業です。
 
内容は、一言で言えば「HubSpotのミレニアル世代主導のハチャメチャなコーポレート・カルチャーに、著者が辟易する(同氏は50代)」といったもの。
 
「Silicon Valley」の脚本家とあって、表現が巧みで、スラスラ読めます。出てくるエピソードは多少(かなり?)脚色が入っていると推測されるものの、シュールなコメディを見ているような感覚です。HubSpotの経営陣からしてみれば、「暴露本」とも言えるのかもしれませんが・・・。
 
Lyon氏は、HubSpotで起きていることは現在の米国ベンチャー業界の縮図だとしています。その主張の要旨は以下(少々極論かもしれませんが・・・)。
 
  • ミレニアル世代は、勤務先に「お金よりミッション」を求める。米国ベンチャー企業は、その特徴をうまく利用し、若者から搾取している。つまり、1)どんなにニッチなビジネスを展開していようとも、「世界を変える!」といった壮大な「ミッション」を掲げ、2)無料ランチや各種社内イベントを頻繁に開催することで「お得感」、「チームへの帰属感」、そして、「カルチャー」を醸成する。その「ミッション」と「カルチャー」を提供することによって、ミレニアル世代は安い賃金を許容する。また、「ミッション」と「カルチャー」が社内で絶対とされるがゆえに、それに「迎合しない」社員は早々に「卒業する(解雇される)」ことになる。この一連のプロセスはシリコン・バレーの「年齢差別(30代後半以上を軽視)」にもつながっている。

  • 現代の米国ベンチャー企業の成功モデルは、「ひたすらベンチャー・キャピタルから資金を調達し、セールス&マーケティングに膨大な資金を投入し、全く利益が出なくても売上の伸びだけをとにかく確保し、そのままIPOに持っていくこと」。一昔前は自前のテクノロジーの質がモノを言ったが、ソーシャル系が主流の今はテクノロジーで差をつけるのは難しく、セールス&マーケティングが勝負を決める。つまり、どれだけ安く、早く、多くセールス&マーケティングにリソースを投入できるか、それによって売上を伸ばすことができるか、というのが至上命題。そのためには、先ほどの「安く大量のミレニアル世代を雇用できる」ことが鍵となってくる。このモデルは、ベンチャー・キャピタルと創業者には巨額の富をもたらすが、(若い)従業員と一般投資家は割を食う羽目になる。
 
文中では、被害妄想(?)とも捉えられる箇所もあります。ただ、「ベンチャー・ブーム」を賞賛する記事が米国メディアに溢れる中、同業界のエキスパートではない私にとっては、実状を知るうえでの一つのビューとして参考になりました。拙著でもご紹介している「過去のIT
バブルにおける、当時の投資家の行動」と照らし合わせて読むのも興味深いと思います。


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    投資プロフェッショナル。著者。投資、MBA、書籍などについて綴ります。

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